排卵障害について

排卵障害は、卵子が成熟し排卵するまでのプロセスが何らかの原因で異常となり、卵子が育たないか、排卵ができなくなっている状態をいいます。
通常約1ヶ月に1回の排卵が、数ヶ月に1回の状態(稀発排卵)、排卵が起こらなくなる(無排卵)状態になり、妊娠しにくくなります。このため、女性側の不妊の原因の1つとなっています。

排卵の状態を知るには、基礎体温をご自身でつけると確認できます。生理開始から排卵前は低温期となり、排卵が起きた後には高温期となります。
体温が上昇し高温期となっても排卵していない状態(黄体化非破裂卵胞症候群:LUF)などもあり、基礎体温のみでは確実に排卵できているかは判断できないため、クリニックを受診し排卵チェックを行うことがお勧めです。

ウィメンズ漢方では、中医学の考えをベースに、要因となる不調を取り除く漢方薬のアドバイスと提案をしています。
また、西洋医学の治療と併用する場合でも、薬効を期待できる状態に体調を整えていくことが必要です。薬剤師が両面から総合的にカウンセリングを行い、アドバイスを行います。

排卵障害の原因

排卵障害の原因には、

1.中枢性(視床下部・下垂体性)
 1)高プロラクチン血症
 2)甲状腺機能異常
2.多嚢胞卵巣症候群(PCOS)
3.卵巣の機能低下
4.黄体化非破裂卵胞症候群(LUF)

などがあります。これらが単一ないし複合的に重なっていることがあります。
西洋医学での治療と、中医学による対応、それらを併用することも考慮した漢方薬の役割などを紹介します。

1.中枢性(視床下部・下垂体性)の無排卵

排卵は、脳の視床下部、脳下垂体から分泌されるホルモンが卵巣に働きかけることで起きます。しかし、この流れのうち、いずれかに異常がおこると無排卵となります。
視床下部はストレスの影響を受けやすく、ストレスは無排卵の原因になることがあります。
また、急激なダイエット、激しいスポーツなどによる体重の増減から無排卵となることがあり、この時は元の体重に近づけることが優先されます。
中枢性の要因としては、甲状腺機能低下症や高プロラクチン血症などがあります。また、下垂体腫瘍などでも排卵が止まる場合もあり、これらの場合は原疾患の治療を行います。 

*西洋医学の妊娠に向けた治療
排卵を誘発する薬剤などを用いて排卵を促します。また、原疾患がある場合にはその治療を行います。

*中医学による対応
原疾患がある場合は原疾患の改善に向けた処方、ダイエット等による体重減少の場合は気血を養い体の生理機能がうまく働くようなサポートを行います。腎精(両親から受け継がれた生殖能力の源)を補う、肝(自律神経を司る)の状態を整え、排卵障害の要因となる体質から体調を整えるカウンセリングを行います。

1−1)高プロラクチン血症

プロラクチン(PRL)は、乳汁分泌ホルモンと呼ばれ、母乳を出すために必要なホルモンです。出産後に脳下垂体から分泌され、授乳期間中に大量に分泌されることにより、排卵が起こらなくなります。高プロラクチン(PRL)血症は、このプロラクチンの分泌が授乳中でないにも関わらず増加している状態で、無排卵や受精卵の着床を阻害するなどの要因になります。高プロラクチン血症となる原因としては、ストレス、甲状腺機能低下、多嚢胞卵巣症候群、脳下垂体のプロラクチン産生腫瘍、また、消化管に作用する薬や精神安定剤などの副作用として起こることもあります。

*西洋医学の妊娠に向けた治療
服用している薬が原因の場合は、原因となる薬物を中止します。薬剤性以外の高プロラクチン血症では、一般的にはカベルゴリンなどの投薬によりプロラクチンの産生量を抑える治療が行われます。脳下垂体のプロラクチン産生腫瘍が原因の場合は、手術療法が適応になる場合もあります。
参考資料)柴原浩章 編著,不妊・不育外来実践ハンドブック(中外医学社)P47-52

*中医学による対応
中医学では、高プロラクチン血症を、腎陽虚(生殖能力を司る「腎」に熱を生む力がない」、肝鬱気滞(中枢神経系の活動を司る「肝」の働きが悪くなり、「気(エネルギー)」の流れが鬱滞している)、瘀血(血流が悪い)などが単一、もしくは複合的に絡まりあった状態だと考えます。
そのため、個々の体質を確認した上で必要な処方をご提案していきます。カベルゴリンとの併用ではまれに起きる吐き気などの副作用も考え、提案を行います。

1−2)甲状腺機能異常

甲状腺機能の異常には、甲状腺機能が亢進して、ホルモンの分泌が増加する甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)と、甲状腺機能が低下して必要なホルモンの分泌が減少する甲状腺機能低下症(橋本病など)があります。亢進症では無排卵や無月経などの月経の異常、低下症では流産や死産などがみられます。甲状腺機能異常の多くは自己免疫疾患であることが多く、その治療を行い、妊娠についても考えていきます。

参考資料)柴原浩章 編著,不妊・不育外来実践ハンドブック(中外医学社)P236-237

*西洋医学での妊娠に向けた治療
甲状腺機能亢進症の場合には、チアマゾール、プロピルチオウラシルなどの甲状腺ホルモンの産生を抑える治療、あるいは甲状腺組織切除術を行うなどでホルモンのバランスを整えます。
甲状腺機能低下症の場合には、適切な量の甲状腺ホルモン製剤を内服して不足しているホルモンを補充します。甲状腺ホルモンの数値が正常の場合は治療の必要はありませんが、不妊治療により妊娠できた場合、妊娠維持のために甲状腺ホルモン製剤を内服することがあります。

*中医学による対応
甲状腺疾患は、多くが自己免疫の異常によるものであるため、中医学において免疫調整を行うとされる漢方などを体質に合わせてご提案します。
また、西洋薬の投薬で随伴症状が改善されない場合には、症状の緩和を目指し体調に合わせた漢方のご提案を行います。

2.多嚢胞卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞卵巣症候群は、卵巣内に多くの未熟な卵胞が排卵できずに留まった状態で、無排卵の原因の1つとして知られています。卵巣表面の部分が硬くなり排卵できず、超音波検査ではネックレスサインと呼ばれる、卵巣に卵胞が連なった所見がみられます。血液検査では血中男性ホルモン高値、または、LH基礎値高値かつFSH基礎値正常が認められた場合が診断基準とされています。

詳しくはこちらの記事もご参照ください。

参考資料)
日本産婦人科学会 生殖・内分泌委員会,日本産婦人科学会雑誌,2007,59:868-886
日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会 産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編,2017,P201-204

*西洋医学の妊娠に向けた治療
クロミフェン、hMG等の排卵誘発剤を用いて治療します。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの副作用に注意します。また、糖代謝に異常がある場合は、肥満に対する生活習慣の見直しやインスリン抵抗性を改善するメトホルミンの服用が行われます。

*中医学による対応
漢方では、多嚢胞性卵巣症候群の原因を、腎虚(生殖能力を司る腎の機能低下)、瘀血(血流が悪い)、痰湿(余分な老廃物が溜まっている)、気滞(ストレス過多などによりエネルギーの流れが悪い)などの体質が複合していると考えます。
原因となる体質の改善を行うことで排卵を行える体質へ整えていきます。

3.卵巣の機能低下、異常

卵巣の機能低下とは、視床下部や下垂体からのホルモンにより卵胞を育てるよう指令が出ているのにも関わらず、卵巣が反応しない状態をいいます。卵巣機能の低下要因には、年齢によるもの、卵巣から放出されるエストロゲン、プロゲステロンの分泌能の低下、卵巣内の原始卵胞数(成熟前の卵子)の減少などが挙げられます。血液検査で、女性ホルモンのバランスを確認して、分泌能を確認するなどで確認していきます。近年、AMH(抗アンチミュラー管ホルモン)の量と年齢の関連性が示されており、原始卵胞数を予測する目安として、検査することがあります。

参考資料)
Pankhurst MW,J Endocrinol. 2017 Apr;233(1):R1-R13. doi: 10.1530/JOE-16-0522.
柴原浩章 編著,不妊・不育外来実践ハンドブック(中外医学社)P47-52

*西洋医学の妊娠に向けた治療
エストロゲンとプロゲステロンを周期的に服用するカウフマン療法などで卵巣の活動を休ませます。その後の治療法として、エストロゲンを補充しゴナドトロピン(FSH, LH)を抑制し、卵胞の発育がみられたら、排卵誘発剤であるhMG、hCG注射をして卵胞を育てていきます。早発卵巣不全(40歳未満の早い時期に排卵がなくなること)においても同様の治療が行われることがあります。。

*中医学による対応
生殖能力を司る「腎」の働きを高める補腎剤、中枢神経系(自律神経)の活動を司る「肝」の働きを助ける疎肝剤、脳の指令となるホルモンを卵巣に届ける血を充足させ、流れをよくする補血剤、活血剤などが体質を整える際に用いられます。カウンセリングを十分に行い個々の体質に応じています。

4.黄体化非破裂卵胞症候群(LUF)

排卵期のホルモンが分泌されても卵胞が放出されず排卵しないまま残り、黄体化してしまうことをいいます。基礎体温は2相性となり、排卵が起こっているように見えるため、超音波で排卵済みかどうかを確認することで診断されます。排卵誘発剤を用いた不妊治療において見られ、炎症の機序との関連が示唆されています。
月経不順がある時や、月経量が少ない時、不正出血がある時は、LUFが起こっている可能性があります。翌月に持ち越したLUFは、自然に吸収されますが、一方で新しい卵胞の発育に影響を及ぼすことがあります。

参考資料)
Shibata Tet al.,Transl Res. 2016 May;171:63-70. Tomioka RB,et al.,Clin Rheumatol. 2018 Oct;37(10):2869-2873.

*西洋医学の妊娠に向けた治療
LUFが残っていても新しい卵胞の成長が期待できる場合には、治療が進められることもありますが、卵の成長への悪影響が懸念される場合には、ホルモン剤を服用してリセットして、次の周期に備えます。

参考資料)
柴原浩章 編著,不妊・不育外来実践ハンドブック(中外医学社)P47-52、P236-237                 
日本産婦人科学会 生殖・内分泌委員会,日本産婦人科学会雑誌,2007,59:868-886                     
日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会 産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編,2017,P201-204              
Pankhurst MW,J Endocrinol. 2017 Apr;233(1):R1-R13. doi: 10.1530/JOE-16-0522.                  
Shibata Tet al.,Transl Res. 2016 May;171:63-70. Tomioka RB,et al.,Clin Rheumatol. 2018 Oct;37(10):2869-2873.

*中医学による対応
中医学では、卵巣壁が硬く、厚くなることや、卵巣周辺の血流が悪いことがLUFを招きやすくなると考え、粘膜や皮膚の「津液(体に必要な水分)」を保持しやすくする活血剤などが用いられます。また、LUFが吸収されやすい体調に整えるために生殖能力を司る「腎」の働きを高める補腎剤、中枢神経系(自律神経)の活動を司る「肝」の働きを助ける疎肝剤を用いるなど、体質と治療の方針に沿った対応を行います。

排卵障害についてウイメンズ漢方の考え方

不妊の原因の一つである排卵障害を大きく捉えると、
        

1)なんらかの要因(ストレスなど)から今は排卵しない・他を優先した方が良いという状態に心身全体が傾いている
2)根本的に原因に直接アプローチする治療が必要な身体の状態となっている      

という2つの可能性があります。

2)は西洋医学が得意とする、治療原因へ直接作用する治療を行うことです。
一方1)は、病気というよりも生体を維持するために身体を守っている可能性があり、その原因を取り除き、妊娠できる心身の状態に整えていくようなアプローチが役立ちます。
漢方は1)の状態を「未病」と捉え、整える役割を行います。カウンセリングを行いながら、心と身体の両方を整え、妊娠できる身体になるように伴走していきます。

*本内容は一般的な記述に留めています。中医学による体質の確認と個々にお悩みなことにより方法は様々です。さらに深く知りたい、診療を受けたいという方は、主治医・薬剤師にご相談ください。

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