不妊原因の半分は「男性」も関わっている│男性不妊症について

不妊原因の半分には男性が関わっています。

 

WHOの発表によると、不妊原因のおよそ半分に男性が関わっていることが関わっているとされています。

 

男性の身体のアルゴリズムから理解する


精子に関わる男性の身体のアルゴリズムとして

 

・精子をつくる

・精子を運ぶ

・精子を射出する

 

というステップがあり、それぞれの部分でなにかうまくいかないことがある場合に「男性不妊症」となります。

 

検査としては、精液検査と問診でほとんどのことがわかります。

不妊原因(スタート)がわかれば、治療方法(ゴール)が見えてきます。

 

不妊治療はゴールが見えない戦いとも言われます。

その中で、明確にスタートとゴールが見えることは、とても大きな意味を持ちます。

身体的な負担はともかく、精神的な負担と、妊活に費やす時間がかなり変わってきます。

 

そのため、妊活の一丁目一番地は精液検査です。

男性の不妊治療への早い段階での参加が重要です!

 

原因①精子をうまくつくることができない


この症状は造精機能障害と呼ばれており、大きく2つに分類されます。

 

  • 精子がまったくない(無精子症)
  • 精子の数が少ない(乏精子症)

というもので、それぞれに治療のアプローチがあります。

無精子症は精巣内精子回収術による治療を行います。

この手術は生殖医療専門医かつ泌尿器科専門医のいる病院でうけましょう。

(とても少ないので注意!)

 

乏精子症に対しては、様々な治療が挙げられ、漢方での改善を試みるケースもあります。

最近では、精索静脈瘤手術も保険適用されているため、乏精子症の原因が何になっているかを主治医とよく相談しましょう。

 

原因②精子をうまく運ぶことができない


精巣でつくられた精子を運ぶ通路が詰まっていたりすると、

精液の中に精子が見られない(無精子症)状況になります。

 

※ただ、前述の無精子症とは若干内容が異なり、精巣では作られているのに精子を運ぶ道が塞がっている(閉塞している)ことが原因となるため、閉塞性無精子症と呼ばれます。反対に、前述の無精子症は非閉塞性無精子症となります。

なお、無精子症は、一般男性の100人に1人、男性不妊症の方では10人に1人の割合で存在すると言われています。

 

特に閉塞性無精子症の方の場合には、精巣内精子回収術によって、かなり高い確率で精子が回収できると報告されています。

こうした手術は泌尿器科専門医の生殖医療専門医が在籍している医療機関で受ける必要があります。

 

生殖医療専門医は全国で1000名を超えていますが、そのほとんどが産婦人科専門医であり、泌尿器科専門医は100名もいませんので、受診の際にはしっかりと調べてから、予約を取りましょう!

 

原因③勃起不全や射精障害、精路通過障害


精子は精巣で作られているし、通路も塞がっているのに、うまく射出できない場合、勃起障害射精障害などが原因となっていることがあります。

これらは泌尿器科専門医の診察後、薬剤の使用等によって治療を行います。

 

男性不妊検査は「精液検査」


男性は精液検査を行えば、男性不妊があるかどうかはほぼわかります。

 

精液検査で確認する項目(WHO2021)

 

精液検査 基準値
精液量 1.4ml以上
精子濃度 1600万/ml以上
運動率 42%以上
総運動精子数(精液量×精子濃度×運動率) 1638万以上
正常形態率 4%以上(奇形率96%未満)

 

精液検査の数値の解釈の注意点

基準値は平均値ではなく、「自然妊娠できる必要最低限のデータ」と捉えましょう。

このデータを上回っていれば、自然妊娠を保証するというわけではありません。逆に、下回っていても自然妊娠できる可能性もあります。
また、精液の検査は変動が大きいため、上記データはカップルの生殖能を間違いなく判断するものではありません。あくまでも、目安として考えましょう。

妊娠の可能性については、女性パートナーの状況に大きく左右されます。不妊原因は明確に特定できるものが少ないものです。
男性にも、女性にも、不妊原因があるという場合も多くあります。

可能であれば、夫婦で同じ病院に行き、診察を受けられるのがベストです。
軽度の男性不妊であれば、そこへの治療を行うのではなく、人工授精や顕微授精にステップアップするということもあります。

そのため、どちらかだけが病院にかかっている状態は好ましくありません。

 

精液検査は簡単な検査です

採血や内診などの痛みや苦痛を伴う処置もありませんし、生理周期などにスケジュールを合わせる必要もありません。保険診療であるため、費用的な負担も大きくはありません。

 

日本では一般的に妊活=女性が行う、という風潮もあり、女性が排卵日を調べ、タイミングのスケジュールを組んだり、基本的な検査ははじめは女性だけがうけているという方も多く見受けられます。

 

何年かそうした状況を繰り返し、いよいよ体外受精などの治療を検討する段階となったら、

男性が治療に参加することとなり、このタイミングで精液検査をしてみたら、男性不妊だったことが発覚するというケースもあります。

 

(やや乱暴な表現かもしれませんが、)このようなケースであった場合、女性が1人で悩み、苦しんだ治療期間は意味がなかったことになってしまいます。

 

検査を受けたことがない男性にははじめは抵抗があるかもしれませんが、

ぜひ妊活をはじめるカップルの方は方は、早期に男性が精液検査をうけることをおすすめします。

 

 

男性不妊の治療のほとんどが「保険診療」です


2022年の不妊治療の保険適用化にともない、男性不妊治療もまた保険診療へと移行しました。

 

男性の不妊治療で多いところでは、

・精液検査

・精索静脈瘤手術

・精巣内精子回収術

・ED治療

なども保険適用で行います。

 

自費で特殊な治療を行っている医療機関もあります。

保険で受けられる治療が質が低いということではありませんので、

ご自身の症状にあった治療を受けましょう。